『ドラゴン危機一髪』
原題:唐山大兄
英題:The Big Boss
1971年 香港 100分
監督:ウェイ・ロー
人の指は人の身体を貫けるのだろうか?
これを観ると、いつも、そんなことを考えてしまいます。どうも、オレンジです。
リー×ゴールデン・ハーベスト第一作のこちら。
不況の続く香港からタイの製氷工場へ働きに来たチョウアン、働き始めて間もないある日、チョウアンのちょっとしたミスから、工場長に製氷工場とは表向きで、ウラで麻薬が取引されているという秘密を知らされた仲間の二人が行方不明に。正義感が強く、リーダー的存在であったホイが二人の身を案じて社長のもとへ行くと、一緒に社長宅へ行ったキョンと共に行方不明に。
4人もの行方不明者が立て続けに出れば、当然、皆、理由と居場所がわかるまで工場長の言うことなど疑ってかかるし、働けなどということに聞く訳もなく、一騒動。そこでカンフーの達人だと知られたチョウアン。社長の企みで工場の主任にされるが…というお話。
しかしこれはなんでしょうか、勧善懲悪のストーリーの中に所々変なものが混じっていますね、盛りだくさんです。
たびたび流れるオルゴール風の母さんとの約束BGM。
これね、喧嘩の場面でも空気を読まずに挿入されていて、正直、ちょっとくどいんですけど、慣れてくると、いかにもコレが挟まっていそうな場面で挟まってないと、ちょっとさみしいかもと思わせてくれます。
そんなんもあり、仲間も様々、お金もないのにイカサマの博打に手を出すギャンブル依存の気のあるやつもいれば、お調子者のいかにも気のよさそうなコンさんみたいな人もいて、とにかく仲間!人情!
ホイの妹ハウムイとの恋愛とも呼べないあわーーーーーいなにかがあったり、セクシー担当があったり。
んー、まぁまぁ、こういうのいいですよね…でも、闘いのシーンでスコーン!だとか、バイーン!だとかの音響とか、人型に抜ける壁とか、笑っていいのか?ええんのんか?!
他にも、意見は単刀直入!会話の駆け引きなんてしません。やられたらすぐに死ぬ!息を引き取る際の無駄な演技はありません。泣いちゃっても慰められたらすぐに泣き止む!同情する間もありません。
それなのに色気のシーンでそんだけ尺とるか?そっかー、ってね。
香港映画、本当にわかんない!
で、ここは私としての見所なんですが、声をあまり大にして言えないのだけど、リーの”まるで女を知らなそうなウブな青年”の演技がすごく良いんです!
紹介されたハウムイとまともに目を合わせなかったり、助けたハウムイの肩に手を乗せるも、危険が去るとハッと離れたり、これは別の意味も含んでいるかもしれませんが、悲しんでいるハウムイの肩を抱けなかったり。
そんな子供がいる人とは思えない新鮮な演技がすごく上手くて好きです。
…なのに、主任となり、工場長ときちんと話して、警察も頼って4人を探す!という目的をくらまされ、お酒を飲まされて、一緒にいた商売の女性がハウムイに見えて、でれーっと、で、そんな関係になっちゃって「リ、リー最低。」ってなるんですけど。
そのせいでハウムイにも、コンさんたちにも誤解されることになるんですが…
そんなチョウアン、母さんとの約束の思いを込めてつけていたペンダントが破壊され、やっぱりキレます。行方不明の4人の無残な姿を見て、更に更にキレます。そして、ここまでする必要があったのか?くらいに残酷すぎる仕打ちにとにかくキレます。
で、ザ・ビッグ・ボス!藤田まこと似の社長との対決です。
この社長が鳥かごをもって手下にまずチョウアンの相手をさせている間のポーズ…じゃないのかもしれませんが、ポーズが可笑しくて可笑しくて、本当に真面目な場面なのにすみません(笑)
その鳥かごをぽーんと木の枝へ投げ掛ける。チョウアンがその鳥かごを落とし、鳥を自由にさせる。リーの正義と、捕らえられたものの解放を表すようにも見えます。
ここからの社長との対決になると、緊張感たっぷりで、もう目が離せません。
まぁ、リーが主演である以上、こういうシーンは完全に見せ場なのでしょうけど、なんていうのかな、肉体一つと少しばかりの武器で戦うチョウアンは、もうひとりぼっちなんですよね。一人なら逃げても良いのに卑劣な相手と戦うっていうのが性というか、悔しさ許せなさみたいなものを強く感じるんです。
しかも、結構、若者の設定なのに、故郷の母は70を過ぎているだとかで、そこはまぁ映画ですし、せっかくの葛藤ですし、突っ込みたい気持ちを抑えておきますが、ここで逃げて母と貧しくとも平和に生きる選択もあったはずなのに!
嗚呼!と、もう、胸がいっぱいになりますよってに。
最後に裁かれるのも、正義なら人殺しても無罪という感じの映画とは違って、切なくて良いですね。
ちょっと私がいつも映画の情報を調べるのに利用しているIMDbというサイトで見た情報ですが、喧嘩シーンでは青や茶のパンツにTシャツと青いベルトをしているけど、シリアスな決闘シーンでは長袖のシャツに黒いパンツ、白いベルトをしていて、これには中国の文化が関係しており、白は死を表すという事らしいです。
そんなことも踏まえると娯楽映画としてだけではなく、理解が深くなる気がしますね。
というか、撮影の時にシェパードみたいの投げてないよね?と、そっちの方が気になるなーという感想を持ちつつ。
以上、『ドラゴン危機一髪』についてでした。