『トミー』

『トミー』

原題:Tommy

1975年 イギリス 106分

監督:ケン・ラッセル

 

イギリスのバンド、The Whoの同タイトルのアルバムを映画化したロックオペラ。

クラシック一辺倒だったケン・ラッセルに映画化の話を持って行くも一度は「くだらない!」と一蹴されたが、無事に制作され

その後フランツ・リストを題材にした『リストマニア』にもロックのテイストが採用されていることと、ロジャー・ダルトリーが主演していることから察するにケン・ラッセルにとっても転機になったのかな?と思われる作品。

 

映画の背景は第二次世界大戦中。

何の変哲もない、若く幸せなカップルの男性に出征の命令が下り、やがて女性は戦死の通知を受ける。

間もなく英国勝利の日に父のいないトミーが産まれる。

数年が過ぎトミーを楽しませてくれ、自分も慰めてくれるだろうと思われた男性と再婚するが、なんと前夫は生きていた!

突然帰ってきたトミーの本当の父親であったが、二人はその本当の父を殺してしまい、さらにその場面をトミーに見られてしまう。

この一件以来、トミーは何も聞こえず、何もしゃべらず、何も見えなくなり…というお話。

 

この映画には、人生のイベントがすべて盛り込まれていると思います。

イベントといっても学校の入学・卒業、就職、結婚などという俗世の目に見えるイベントではなく、人生の意味を追い求める者ならば通るであろう内面的なイベントで、言ってみれば普遍的なテーマだと言える。

いろいろな体験をさせるが、それでは何も解決せず、トミーが求めるのは「僕を見て、僕を感じて、僕に触れて。」

つまり愛してという事だけなのである。

一度は母の荒療治でそれを得たように錯覚するが、今度は抜け出した自分におごってしまい、また失い、本当の愛を見つける。

見ざる言わざる聞かざるの状態のトミーが、その愛の心理にたどり着くまでの紆余曲折を、人間の持つ普通であるというグロテスクさなどを交えて表現してゆく過程があり、運命に間違いなんてないのだろうけど、それでもあえて言うと間違いばかり。

 

それらに登場するのもThe Whoのメンバー、特にアーニーおじさんことキース・ムーン、マリリン・モンロー教のエリック・クラプトン、麻薬の女王のティナ・ターナー、ピンボールチャンピオンのエルトン・ジョン、トミーが診てもらう腕利きの医者にジャック・ニコルソンなど、とかなりの面子なんである…が、すごいと分かるだけで、エリック・クラプトンとティナ・ターナーは音楽を聴いたことすらないんですけどね(笑)

しかも、ティナ・ターナーはそんな現場に手作りの料理を差し入れる素敵な女性だそうで、それはなによりでしたね、なんて思ったり。

で、ロックがインパクトであるなら、そのインパクトを確実に与えられる顔ぶれと演出、歌詞に合わせて音楽そのもののようにコロコロ変わる感情や、オーバーアクトも面白く

衣装や色使い、小物使いもシーンごとの感情を掴みやすく出来ています。

そして、観終わった後は自分が新しくなった気分になります。

好きな作品です、個人的に印象に残るシーンとしては、戦火の中で逃げ惑う人々の中にガスマスクをつけたキャバレーのダンサーのような女性がいて、一瞬カメラ(鑑賞者?)を見るシーンでしょうか。

おこがましいですがおすすめです。

 

以上、『トミー』についてでした。

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