『引き裂かれた女』
原題:La fille coupèe en deux
2007年 フランス 115分
監督:クロード・シャブロル
ケーブルテレビ局でお天気キャスターをしているガブリエル・ドネージュ。見た目も魅力的で、天真爛漫であったが、サン・ドニという作家や、ポールといういわゆる七光りの実業家との出会いと、その二人との関係によって彼女のすべてが壊れてゆくお話。
作家のサン・ドニは本名をシャルル・ドニといい、快楽主義者であり、妻を持ちながら、また妻に不満があるでもなく、ただただいろんな女を囲う遊び人。
一方ポールは、一途といえば一途だが、育ちによるものか、欲しいものは何でも手に入れなければ気が済まない、一括りでは言えないが、多くの人が想像に容易い成り上がりのお坊ちゃん。
この二人に言い寄られるガブリエルだが、ポールとは友達でいたいため、結果、思わせぶりになってしまい、シャルルに対しては父性やその体験に伴って成熟しているように見える物腰に惹かれ、のめり込むが、ある時を境に部屋の鍵も変えられ、結局捨てられてしまう。
落ち込みの激しいガブリエルに見かねて、ポールと出かけるように母親に促される。
あくまで友達でいたいというガブリエルにいよいよ激高したポールに怯え、結婚を了承してしまうのだが、結婚生活、主に性生活の中にちらつくシャルルの痕跡に嫉妬してポールはさらに怒り、関係はぎくしゃくしたものとなる。
といった具合に、出会いとタイミングがすべて悪かったなとつくづく感じる作品でした。
それにしてもシャルルのような男はなぜ放っておいてはくれず、自分は離婚はしないがポールとの結婚については早まるなと忠告しに来たりするのかと、嫌な気持ちになりました。
ガブリエルは本当に平凡で嫌みのない女性なのに、まるで、土足でドカドカと踏まれ汚されてゆく雪(ネージュ)を見るような気持ちでした。
また、そんな彼女だからこそ、身も心も汚されたとは思わず、自分を追い込んでしまうのがつらい。
結末は衝撃にて静かな悲しみで淡々とすべてが終わるのですが、長い一日の中のほんのちょっと歯車の狂った一瞬として振り返らずにゆくしかないわけで、でも、その一瞬はそうそう忘れることも出来ない瞬間で、大人になるってこういうことをやり過ごすことの繰り返しなのかなと寂しい気持ちになりました。
この物語の中のガブリエルという役柄は、感情をぶつけるシーンがあるわけでもなく、発狂しちゃうわけでもなく、演技のさじ加減というか、表情なんか難しいと思うのですが、最後まで違和感なく引っ張られるので、結構、気にしてみると女優さんにも感動します。
最後、ガブリエルは、叔父のやっかいになりお手伝いをすることになり、本当に原題の通り真っ二つに引き裂かれます。
以上、『引き裂かれた女』についてでした。