『橋の上の娘』
原題:La fille sur le pont
1998年 フランス 92分
監督:パトリス・ルコント
性に対するハードルも自己評価も低く、自殺すら満足に出来ない女性が、橋の上でナイフ投げだと自称する中年男に声をかけられ、ナイフ投げの的になって…というお話で
男いわく、「的とは寝ない」らしく、確かに物理的には寝ないのだけど、セックスを精神性も含め広義にとらえるなら彼らの行為はまさしくそれで、それもステージの上で見せつけるようなそんな大胆なプレイないんじゃないかなと。
的である女は男にすべてを委ね、男もまた的である女を余すところなく愛おしむようにと、これ以上ない信頼関係しかなく、ナイフがすべてを貫くような音を立てて身体に触れそうなところギリギリに次々と刺さってゆく中で女は恍惚の表情を浮かべる。
鋭く光るナイフを通して呼応する二人の感情がすごく官能的で、特に二人だけのナイフ投げのシーンはドキドキします。
そう、ドキドキ、これは観ている側にとっても、多分、吊り橋効果があって、ナイフ投げにドキドキしているのか、二人の醸し出す雰囲気にドキドキしているのか、おそらくは両方か、ドキドキします。
二人の愛情が深まりゆくのが空気に見えるような作りも良いです。白黒で色による情報が入ってこないからこそシンプルに二人の関係が見えるのも。
そんな二人ですが、船に乗って次の興行先へ向かう旅中に突然別れが訪れる。きっかけも顛末もしょうもないのですが、とにかく二人は別々の道へ。
聞こえるはずなど絶対にない別の場所から、心の中でお互いを求め合い、語りかけ、応えるシーンがすごく良かったです。
最後にはまた会えるのだけど…というか、その最後しか思い浮かばないけど、とにかく会えます。
この二人は似たり寄ったりだったから惹かれあったと思われるので、共倒れするんじゃないかとの懸念もありつつ、アンラッキーな二人が一緒にいるとなぜか起こるラッキーが続くと良いなと思いました。
時に、それが作られたラッキーだったとしても。
以上、『橋の上の娘』についてでした。